生成AIを活用した見積書作成の自動化 ~OCR×LLM活用とRAGの融合~

製造

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1. はじめに

製造業におけるDXのトレンド

ご存知の通り、近年、製造業界ではAIなどのデジタル技術を使ったDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでおり、従来の生産ラインや品質管理の領域にとどまらず、さまざまな業務に活用が広がっています。

たとえば製造現場の品質検査を生成AIで自動化する事例については、弊社のマガジンでも以下のように紹介しています。

生成AIを用いて製造現場における品質管理業務を自動化する:組み立て作業の自動評価システムの例|AlgoMagazine
製造業において、製品の品質管理は企業の競争力を左右する重要な要素です。特に、人手による組立作業では、作業品質の維持・管理が製品の質に直接影響を与えます。

さらに近年では、事務処理や見積もりなどのバックオフィス業務にもAIが次々と導入され、企業全体の業務効率や精度を高める取り組みが加速しています。

その背景には、コスト競争力や受注スピードの向上、人材不足を補う働き方改革など、さまざまな要因が挙げられます。

今回、焦点を当てて取り上げる、従来の担当者が手作業で行っていた見積業務は、スピードと精度の面で課題になりやすく、ここを改善することが企業の競争力に直結すると考えられているのです。

本記事の概要

さて、本記事では、生成AIを筆頭に、複数のテクノロジーを駆使して「見積書作成の自動化」を実現するソリューションをご紹介します。

具体的には、紙やPDFで保管されている過去の見積書をOCRで解析し、類似案件を瞬時に検索したうえで、AIが見積書を自動生成する仕組みです。

後半では、実際のデモ画面を例に手順を解説し、導入メリットや今後の見通しについても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

2. なぜ今、見積書作成の自動化が製造業DXを後押しするのか

製造業DXの現状と見積書作成の自動化の必要性

製造業のAI活用は、これまでは生産ラインやIoT化されたスマートファクトリーを中心に進められてきました。

しかし、冒頭でも述べた通り、最近では間接部門やバックオフィスへAIを導入する動きが高まっています。 たとえばRPAと機械学習を組み合わせて事務処理を自動化し、人的コストを一気に削減するといった事例も珍しくなくなりました。

また、国内においては、「2025年の崖」や労働力不足への対応などの観点から、政府や業界団体がDX推進に力を入れています。

見積業務のように受発注に直結する業務を迅速化できれば、収益性の向上や海外競合への対抗力アップが見込めるため、今後はますます導入が加速していくと考えられます。

※ここで言う、「2025年の崖」とは、日本企業が抱えるDXの遅れによって、2025年以降に大きな経済的損失が発生する可能性を指す言葉です。(参考:経済産業省,DXレポート)

軽視されがちな見積業務、その本当の重要性とは

軽視されがちな見積業務ですが、実際には単に価格を示すだけでの作業ではありません。提示が遅れれば、競合他社に案件を奪われる可能性が高まり、受注率に直接影響します。また、見積作成に時間がかかると、その後の生産スケジュールや納期に遅延が生じ、最終的には顧客満足度の低下につながる恐れがあります。

さらに、過小見積もりをしてしまえば赤字を抱えるリスクが高まり、逆に過大見積もりでは受注そのものを逃すリスクも否定できません。こうした背景から、見積もりの精度とスピードは企業の売り上げや信頼に大きく関わる要素となっており、見積プロセスの最適化が受注機会の拡大とコスト削減を同時に叶えるカギとなっているのです。

3. 製造業の見積作成における課題

次に見積業務を行う際に現場での声が上がりやすい、製造業の見積作成における課題を整理していきます。

課題①:フォーマットのばらつきからくるデータ化の難しさ

まず、多くの製造業では、大手・中小問わず、取引先や社内部門ごとに異なる見積書フォーマットが使われていることが多く見受けられます。

ExcelやWord、PDFなど形式自体がまちまちですし、用語や書式が統一されていないケースも少なくありません。

その結果、データを一元管理しようとすると手入力や手動での修正が必要となり、膨大な工数がかかる状況になっています。

課題②:ノウハウの属人化

また、担当者が長年の経験から、正確な見積もりを素早く作成できる一方、その知識やコツは個人に蓄積されがちです。

そのため、担当者の退職や異動が発生すると、見積精度の低下や回答スピードの遅れといったリスクが表面化します。

心当たりのあるご担当者の方も少なくはないと思います。

課題③:類似事例を探す手間

最後に、過去の案件を参考に見積もりを算出する手法は効果的ですが、必要な情報を探し出すだけでも手作業では相当の時間がかかる作業です。

ファイルサーバー内で資料が散在していたり、検索機能が整備されていなかったりすれば、担当者が暗中模索で資料を探すしかありません。

その結果、見積回答の遅れやチャンスロスを招きやすくなります。

4. OCR解析とRAGを融合させ、見積書作成プロセスを自動化する

ソリューションの全体像

上記の課題を一挙に解決するために、生成AIを中心とした最新技術を活用した見積作成を自動化するシステムが注目され始めています。

具体的には、紙やPDFで保存されている過去の見積書をOCRでテキスト化し、RAG(Retrieval-Augmented Generation)によって似た事例を素早く探し出し、それをもとにAIが新しい見積書を自動生成するというものです。

最終チェックや細かい修正だけ担当者が行えばいいので、作業効率の向上が期待できます。

以下、詳細なソリューションの手順説明になりますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。(こちらは、「6. デモの流れ:PDF解析から自動見積書作成まで」にて、動画を用いて詳しく解説いたします。)

OCRとLLMを活用しPDFを解析し構造化データを作成

OCRとLLMを用いることによって、バラバラのフォーマットで保存されている見積書をテキスト化します。

単に文字を読み取るだけでなく、レイアウト解析も加えることで「製品名」「数量」「単価」といった項目を識別し、最終的にはJSONのような形式でデータを抽出することが可能です。

これにより紙媒体やPDFに閉じていた情報を活用しやすいデータに変換できます。

※OCR(光学文字認識)とは、テキストの画像を機械で読み取り可能なテキスト形式に変換するプロセスです。過去記事「OCRとLLMを活用した情報抽出業務の効率化」にて詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

OCRとLLMを活用した情報抽出業務の効率化|AlgoMagazine
企業の業務において、請求書や領収書、名刺などの紙媒体の情報を電子化し、管理・活用することは非常に重要です。しかし、これらの作業は手作業で行うと多大な時間と労力を要します。また、人的ミスも発生しやすく、業務効率化の大きな障壁となっています。そんな中、近年、OCRの性能向上やLLMの性能向上によって、あらゆる業務の効率化できる可能性が高まっています。この記事では、写真や書類から情報を抽出する取り込み業務について、OCRとLLMを利用したソリューションについて紹介します。

RAGを用いた検索システムで類似事例を選別

次に、RAG(Retrieval-Augmented Generation)機能を活用して過去の見積データや案件情報の中から似た条件の事例を高精度にマッチングします。

製品の種類や生産条件、コスト構造、顧客業種、納期など、キーワード検索だけでは拾いきれない複合条件をもとに瞬時に検索結果が得られるため、価格設定や項目立てに説得力が増します。

※RAGとは、外部情報の検索を大規模言語モデル(LLM)のテキスト生成に組み合わせることで、回答精度を向上させる技術です。こちらについても、過去記事「RAGを使った企業独自の情報に基づいた文書生成AI:募集要項の事例」にて詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

RAGを使った企業独自の情報に基づいた文書生成AI:募集要項の事例|AlgoMagazine
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生成AIを活用した見積書の自動生成

最後に、RAGで得た類似事例を参考にしてAIが新しい見積書を生成します。

社内規定のフォーマットに沿ったレイアウトを自動的に整えることも可能で、統一された見積書の体裁を保ちながら迅速に作成できるため、担当者は仕上がりを確認し、一部を微調整するだけですみます。

そのため、属人的なノウハウや手作業によるミスが減り、短時間で正確性の高い見積書を作成できるようになります。

※もっとも、現実には見積額を算出するうえで、前提となる各種仕様書の詳細などを参照・確認する必要があるケースも多いと考えられます。こうした際には、RAGの対象を見積書だけでなく見積の前提となる類似した仕様書などへと拡張することで、より実務に即した精度の高い見積を可能にする、といった応用も可能です。

5. ソリューション導入の3つのメリット

では次に、このソリューションを導入するとどのようなメリットがあるのか、大きく3つのポイントに分けてみていきましょう。

1)工数の大幅な削減

OCRによる自動解析とRAGを組み合わせることで、見積もりに必要な情報を瞬時に抽出・参照できるため、作業時間が大幅に短縮されます。

さらに、社内標準のフォーマットへ自動的にレイアウトを整形して出力する仕組みを備えているため、担当者が一から書式を整える手間も省け、書類の体裁チェックにかかる時間も大幅に削減できます。

早期に見積書を提示できれば受注率の向上が期待できるだけでなく、担当者の手入力や資料探し、再作業に費やしていた工数も削減され、結果として運用コストも抑えられます。

2)安定した品質の担保

また、紙ベースやバラバラのフォーマットで管理されていた見積書を構造化データとして統合することで、担当者間のばらつきを抑えた正確な見積もりが可能になります。さらに、過去事例や類似案件の情報をAIを通じて一貫して参照できるため、属人的な判断に左右されにくい安定した品質を実現できます。 こうした安定性の高いプロセスを構築できる点は、見積の品質の管理の強化にもつながるでしょう。

3)ノウハウの標準化

さらに、ヒューマンエラーを減らせるうえ、過去の実績やベテラン社員の経験を組織的にデータとして蓄積・共有できるため、担当者の異動や退職があってもノウハウを継続的に活用できます。

これにより、新任担当者や別部署のメンバーでも短期間で知識を吸収しやすくなります。

6. デモの流れ:PDF解析から自動見積書作成まで

ここでは、具体的なデモを2Stepに分けて紹介します。

Step1:見積書の解析と内容抽出

例として「冷感ロール成形機」の見積書を使う場合を仮定し、以下のフローで進行します。

Step1の全体感は以下の通りになります。

1.見積書(PDF)を選択

2.OCR解析を実行し、製品名・数量・単価などをテキスト化

3.UI上に解析結果が表示されるので、担当者が内容を確認

このステップで、従来の手入力や照合作業の多くが省かれ、見積作成の初期段階を大幅に効率化できます。

Step2:RAGによる類似見積の活用と自動生成

Step2の全体感は以下の通りになります。

1.解析されたデータをもとにフォーム(製品名や仕様など)に追加情報を入力

2.過去の見積書をRAGを用いて検索し、類似度の高い事例を一覧で表示

3.任意の事例を選び、AIで新たな見積書を自動生成

4.「作成」ボタンを押すと、社内標準のフォーマットでPDFが即時に仕上がる

この仕組みによって、過去の事例が簡単に検索・再利用でき、AIが価格や項目を自動で提案するため、担当者は細部を確認して調整するだけになります。

なお、上記で紹介したステップの全体の流れについては、以下の動画よりご確認いただけます。

7. 終わりに

見積書作成の自動化で得られること

ここまで紹介してきたように、製造業の見積業務を生成AIを筆頭としたその他技術で自動化すると、担当者の手作業やチェック作業を大幅に削減できるだけでなく、類似事例を瞬時に検索して素早く見積書を提示できるため、回答スピードを飛躍的に高めることができます。

また、過去の事例を土台にヒューマンエラーを減らしながら価格の根拠を明確に示すことができるため、正確性の向上にもつながると考えられます。

見積作成の自動化は単に工数を減らすだけでなく、スピードと精度を両立させることで受注機会を逃さず、企業の競争力を高める大きな可能性を秘めています。

特に、社内標準フォーマットへの自動変換&出力によって見積書の体裁を素早く整えられるため、書類のばらつきや工数を最小限に抑えられる点は大きなメリットといえるでしょう。

これを機に、従来の属人的な見積プロセスから脱却し、データを最大限に活用した新しいワークフローへの移行を検討してみてはいかがでしょうか。

よくある導入時の課題

なお、本記事では概要を中心にご紹介しましたが、実際の導入検討にあたっては、OCR精度や既存システムとの連携、運用方法、セキュリティ・ガバナンス面など、より詳細な検討が必要となるケースが多々ございます。

たとえば、

・既存のERPや生産管理システムとのデータ連携はどう行うのか

・OCR精度が100%でない場合の運用フローはどうなるのか

・導入規模や件数に応じたROI(費用対効果)の目安

・機密データのセキュリティやクラウド利用時の情報保護

といった点は、企業ごとの状況に合わせた検討が不可欠です。

弊社では、お客様ごとの個別課題を踏まえながら最適なアプローチを提案し、導入から運用まで一貫してサポートいたします。 さらに、生成AIを活用した各種業務効率化に関するソリューションを幅広く展開しており、ニーズに合わせて柔軟に対応が可能です。 AIを活用した業務変革(AX)の実現に向けて、詳細なご相談も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Algomatic AI Transformation(AX) | 生成AIでDXを超えるAI変革を
トップダウンの戦略的AI導入と、現場のニーズに即したユースケース開発を両輪に、AI活用による業務変革(AX)を支援します。
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