OCRとLLMを活用した情報抽出業務の効率化

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はじめに

企業の業務において、請求書や領収書、名刺などの紙媒体の情報を電子化し、管理・活用することは非常に重要です。しかし、これらの作業は手作業で行うと多大な時間と労力を要します。また、人的ミスも発生しやすく、業務効率化の大きな障壁となっています。そんな中、近年、OCRの性能向上やLLMの性能向上によって、あらゆる業務の効率化できる可能性が高まっています。この記事では、写真や書類から情報を抽出する取り込み業務について、OCRとLLMを利用したソリューションについて紹介します。

情報抽出などの取り込み業務の課題

情報抽出などの取り込み業務では、以下のような課題が存在します。

手作業による時間と労力の浪費

  • 大量の書類を処理する場合、作業コストが膨大に
  • 単純作業の繰り返しによる従業員のモチベーション低下
  • 他の付加価値の高い業務に注力できない

人的ミスの発生

  • 量が多くなるほど、入力ミスや誤読などの人的ミスが増える
  • ミスによるデータ品質の低下と修正作業の発生
  • ミスが発覚しない場合、後工程に影響を与える可能性

非定型データへの対応の難しさ

  • 非定型データに対応するコストと時間がかかる
  • 非定型データの増加により、業務の複雑化が進む

専門的な知識の必要性

  • 専門的な文書(契約書、論文など)から情報を抽出する場合、人材の確保や育成にコストがかかる
  • 専門知識を持つ人材の不足による業務の停滞
  • 人材の育成には時間がかかり、即戦力としての活用が難しい

これらの課題により、情報抽出などの取り込み業務は非効率となり、業務全体の生産性を下げる要因となっています。OCRとLLMを活用することで課題を解決し、業務効率を大幅に改善できる可能性があります。

取り込み業務の課題を解決するOCRとLLMについて

OCR (光学文字認識)

OCR(光学文字認識)は、テキストの画像を機械で読み取り可能なテキスト形式に変換するプロセスです。OCRを使うことで、紙媒体の情報を高精度でデジタルデータ化できます。
OCRの主な特徴は以下の通りです。

高速処理

  • 画像から文字を自動で認識するため、手作業に比べて圧倒的に高速に処理可能
  • 大量の書類を短時間で電子化することが可能

高精度な文字認識

  • 最新のOCR技術は、手書き文字や複雑なレイアウトの文書にも対応可能
  • 認識精度の向上により、人的ミスを大幅に削減

多言語対応

  • 様々な言語に対応しており、多言語の文書を処理可能
  • グローバルなビジネス環境において、言語の壁を越えたデータ活用が可能

OCRを導入することで、紙媒体の情報を効率的かつ正確にデジタル化できるようになります。ただし、OCRはあくまで画像から文字を認識するものであり、認識した文字の意味を理解することはできません。そこで、OCRと組み合わせて活用されるのがLLM(大規模言語モデル)です。

LLM (大規模言語モデル)

LLM(大規模言語モデル)とは、非常に巨大なデータセットとディープラーニング技術を用いて構築された言語モデルです。
LLMを活用することで、OCRで認識したテキストデータをより高度に処理し、必要な情報を自動で抽出できるようになります。OCRとLLMを組み合わせたソリューションにより、情報抽出などの取り込み業務を大幅に効率化できると期待されています。

OCR、LLMを活用した情報抽出のソリューション

OCR、LLMを活用した情報抽出ソリューションのフロー

OCRによって文書に含まれる文字を読み取り、読み取った文字情報をLLMに与えることで、指定した項目の内容を抽出することができます。
具体的には、以下のような流れで処理が行われます。

1.OCRによる文字認識

  • 紙媒体の文書をスキャンし、画像データを取得
  • OCRを使って画像内の文字を認識し、テキストデータに変換

2.データの整形とフィルタリング

  • 文字認識結果を抽出したい情報に合わせて整形
  • 不要な情報をフィルタリングし、LLMへの入力データを最適化

3.LLMによる情報抽出

  • OCRで認識したテキストデータをLLMに入力
  • LLMは自然言語処理技術を用いて、テキストの意味を解釈し、必要な情報を抽出
  • 抽出する情報は、事前に定義したルールやテンプレートに基づいて決定

4.抽出結果の出力と検証

  • LLMが抽出した情報を整形し、データベースやファイルに出力
  • 出力されたデータは、後工程の業務で活用
  • 抽出結果の精度を検証し、必要に応じてルールやテンプレートを調整

このようなOCRとLLMを組み合わせたソリューションを導入することで、紙媒体の情報を自動で電子化し、必要な情報を効率的に抽出できるようになります。

Algomatic社内の事例

弊社では、OCRとLLMを活用した名刺管理システムを社内で運用しています。

Slackで利用できる名刺管理データベース

  1. 営業担当者が名刺をスキャンし、Slack上の専用チャンネルに画像を投稿
  2. OCRによって名刺の画像から文字を認識し、LLMによって氏名、会社名、電話番号、メールアドレスなどの情報を抽出
  3. 抽出された情報は自動的にデータベースに登録され、検索・閲覧が可能
名刺画像をSlackにアップロードし、情報抽出を行っている様子

この名刺管理システムの導入により、以下のような効果が得られました。

  • 名刺の電子化と情報抽出の自動化により、手作業による時間と労力が大幅に削減
  • 人的ミスによる情報の誤りや欠損がなくなり、データの正確性が向上
  • 名刺情報のデータベース化により、社内での情報共有がスムーズになり、営業活動の効率化を実現

この事例のように、OCRとLLMを活用したソリューションは、情報抽出などの取り込み業務を大幅に効率化し、業務全体の生産性向上に寄与します。

活用事例

請求書・領収書の処理

請求書や領収書は、企業の経理業務において重要な書類です。これらの書類から必要な情報を抽出し、データ化することで、経理業務の効率化が図れます。OCRとLLMを活用することで、以下のような処理が可能になります。

  • 請求書・領収書の画像から、日付、宛名、金額、内訳などの情報を自動で抽出
  • 抽出された情報を基に、会計システムへのデータ入力を自動化
  • 書類の電子化により、ペーパーレス化を促進

この結果、経理担当者の作業負担が軽減され、業務の生産性が向上します。また、人的ミスによる入力誤りを防ぐことができ、データの正確性も担保されます。

専門的な文書などの情報抽出

専門的な文書(論文、特許、契約書など)から必要な情報を抽出する際には、その分野の知識が必要とされ、多くの時間と労力がかかります。OCRとLLMを活用することで、以下のような利点があります。

ドメイン特化のLLMによる高精度な情報抽出

  • 専門的な用語や複雑な表現に対応
  • 高精度な情報抽出が可能
  • 見落としの防止
  • 人間が見落としがちな重要な情報も見逃すことなく抽出
  • 時間と労力の削減
  • OCRとLLMの組み合わせにより、情報抽出にかかる時間と労力を大幅に削減
  • 専門知識を持つ人材がより高度な作業に集中できる

以上のように、OCRとLLMを活用することで、専門的な文書からの情報抽出における精度の向上、見落としの防止、時間と労力の削減が実現できます。

複雑なレイアウトの文書などの情報抽出

複雑なレイアウトの文書、例えば表や図が多数含まれる報告書や論文などから必要な情報を抽出することは、従来のOCR技術では困難でした。しかし、OCRとLLMを組み合わせることで、このような文書からも効率的に情報を抽出できるようになります。具体的には、以下のような処理が可能になります。

レイアウト解析

  • OCRによって文書画像から文字を認識すると同時に、表や図などのレイアウト情報も解析
  • レイアウト解析により、文書の構造を理解し、見出しや段落、表などの位置を特定

表の認識と情報抽出

  • 表の罫線を認識し、セルの位置を特定
  • セル内の文字を認識し、表の構造を理解
  • LLMを用いて、表の見出しと内容の関係を解釈し、必要な情報を抽出

図の認識と情報抽出

  • 図中の文字を認識し、図の種類(グラフ、フローチャートなど)を判定
  • LLMを用いて、図の説明文からグラフの軸の意味や重要なポイントを抽出
  • 図の種類に応じて、適切な情報抽出手法を適用

文脈を考慮した情報抽出

  • LLMを用いて、文書全体の文脈を理解
  • 見出しや段落の構造、表や図の位置関係などを考慮して、文書の内容を解釈
  • 文脈に基づいて、重要な情報を抽出

このように、OCRとLLMを組み合わせることで、複雑なレイアウトの文書からも必要な情報を効率的に抽出できるようになります。

コラム:マルチモーダルAIにおyる情報抽出の可能性

OCRとLLMを組み合わせたソリューションは非常に有効ですが、近年ではマルチモーダルAIの登場により、高度な情報抽出が可能になりつつあります。マルチモーダルAIは、テキストだけでなく画像や音声など複数の種類
のデータを同時に処理できるAIモデルです。

マルチモーダルAIとは?
注目の科学技術や社会課題、今さら聞けないことや、なかなか説明しづらい素朴な疑問を、産総研のプロフェッショナルが分かりやすく解説します!

例えば、請求書や領収書の画像をそのままマルチモーダルAIに入力し、必要な情報を直接抽出することができます。OCRを介さずに画像から直接情報抽出することが可能です。

おわりに

本記事では、OCRとLLMを活用した情報抽出ソリューションについて解説しました。OCRによる文字認識とLLMによる自然言語処理を組み合わせることで、紙媒体の情報を効率的に電子化し、必要な情報を自動で抽出できるようになります。 このソリューションは、請求書・領収書の処理や専門的な文書の情報抽出など、様々な業務に適用可能であり、業務の効率化と高度化に大きく寄与します。また、人的ミスを防ぎ、データの正確性を担保することで、業務の品質向上にもつながります。


弊社のAI Transformation(AX)事業部では、OCRとLLMを活用した情報抽出ソリューションの提供だけでなく、お客様の業務課題に応じた最適なAIソリューションのご提案を行っております。AIによる業務効率化や新たな価値創出に興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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