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はじめに
現代の多くの業界では専門的かつ複雑なシステムの利用が必須となっていますが、操作方法やエラー対応の問い合わせが急増し、現場全体の大きな負担となっています。
本記事では、その課題を解決すべく弊社で開発した「マルチモーダルRAGを適用した自動問い合わせ対応ツール」と、そのツールを用いた業務効率化の実例として、製造業や建設業等の設計業務において広く使われているCADというシステムを対象としたデモをご紹介します。
もちろん今回紹介する仕組みはCADだけでなく、ERPやSCMなど他の専門的なソフトウェアにも応用可能です。そのため、設計エンジニアの方以外にも多くの業界・職種の方に役立つ内容となっています。

複雑なシステムに関するお問い合わせ対応の課題
複雑で専門性の高いシステムを扱う際、操作方法やエラー等に関する問い合わせ対応に多くの工数が費やされることが大きな課題です。これは技術者の作業を中断させるだけでなく、社内のサポート部署の負担も増大させ、現場全体の生産性低下を招く要因となっています。問い合わせ対応に関する具体的な課題を見ていきましょう。

膨大なドキュメント
専門的なシステムに関する技術文書や関連ドキュメントは量が膨大です。そのため、技術者自身が必要な情報を探す場合やサポート部署が問い合わせに対応する場合いずれにおいても、必要な情報を見つけるのに時間がかかります。さらに、ドキュメントの内容が頻繁に更新されるケースも多く、業務で使っているシステムに携わる人全員が最新情報を常に把握することも困難です。
対応の属人化
操作方法が分からない時やエラーが発生した際の対応ノウハウは各技術者の経験に大きく依存しており、日常業務での知識共有機会も限られています。そのため、対応手順のマニュアル化による効率化が進めづらい状況となっており、結果として、同じ問題でも担当者によって解決までの時間や方法にばらつきが生じています。
対応工数の増大
これらの課題により、専門的なシステムの操作方法やエラー対応に関する各技術者やサポート部署の対応工数が増大しているのが現状です。技術者は業務を中断して操作方法やエラー対応についての調査を行い、一方でサポート部署は日々増加する問い合わせへの対応に追われています。このように問題の原因特定から解決策の実施まで一連のプロセスに多くの時間を割いており、本来の業務に支障をきたすケースも少なくありません。
マルチモーダルRAGを導入した自動問い合わせ対応ツール
これらの課題に対し、弊社では生成AIを活用した自動問い合わせ対応ツールを開発しました。このツールはマルチモーダルに対応したRAGを導入しており、複雑なシステムを操作する際に発生する様々な問題の原因や解決策を自動的に提示します。マルチモーダル対応のRAGに関する説明を交えながら、弊社ツールの詳細を見ていきましょう。
"マルチモーダルRAGとは"
RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは、外部データソースから関連情報を検索・取得し、その情報を基にAIモデルが回答を生成する技術です。ChatGPTなどの一般的な生成AIは事前学習済みの知識のみで回答を生成するため、企業固有の情報や最新データに基づく回答が困難でした。一方RAGは、用意されたデータベースから必要な情報を参照して回答を生成するため、より正確で信頼性の高い情報を提供できます。

従来のRAGはテキストベースの情報検索に特化していましたが、マルチモーダルに対応したRAGを導入すれば、テキストデータに加え、画像、音声、動画などの複数のデータ形式を統合して検索と生成のプロセスに組み込むことが可能です。これにより、多様なデータ形式による出入力が可能となり、より幅広い情報活用を促進する技術として注目されています。

RAGにまつわる詳細と実際の業務適用事例に関しては、以下の弊社記事をご参照ください。

ツールの特徴
今回弊社で開発した自動問い合わせツールは、マルチモーダル対応のRAGを導入することで、テキストだけでなく画像や動画といった視覚的な情報も活用し、より分かりやすい形でシステム操作に関する解決策を提供します。
従来は個人での解決やサポート部署への問い合わせなど、人手による対応が一般的でしたが、弊社のツールを活用することで、シンプルな操作で無駄のない正確な問い合わせ対応を受けることが可能です。それではシステムの詳細について見ていきます。

1.画像とテキストを用いたエラー解析
自動問い合わせツールへの入力は操作画面のスクリーンショットと簡単なテキストのみとなっており、シンプルな操作で複雑かつ専門的なシステムの問い合わせ対応が実現します。

2.ドキュメントや過去の履歴の参照
使っているシステムに関するドキュメントや過去のエラー事例といった情報が入っているデータベースにより、より正確な情報出力が可能です。マルチモーダルに対応したRAGを活用することで、過去の問い合わせ履歴や公式ドキュメントPDFなど形式を問わず、テキスト、画像、動画など多様なデータを用いた回答を提供します。

3.画像や動画データも交えた、視覚的にも分かりやすい解決策の提示
入力情報をもとに、システム操作の状況や不明な点、エラー等の原因を把握するだけでなく、それぞれに対する有効な解決策を提示します。また、過去の問い合わせ履歴の動画も併せて提供するため、通常のLLMが出力するようなテキストだけの回答に比べてより分かりやすい説明となっています。

実際の業務適用デモ
今回のデモでは、専門性の高いシステムの一例として冒頭で触れたCADというシステムを取り上げます。詳細な説明は他の解説記事に譲りますが、CADとは"Computer Aided Design"の略であり、コンピューター上で図面作成を行うためのシステムです。従来の手作業による図面作成を効率化し、精度を向上させるために開発され、現在では製造業や建設業等の設計業務に不可欠なシステムとなっています。

少し専門的な話になってしまいますが、今回はCADのスケッチャーと呼ばれる図形作成機能の使用方法が分からず操作が行き詰まった状況を想定し、本ツールが機能説明を自動的に行う様子をステップごとに紹介します。
Step1:システムの操作に関する情報のインプット
本ツールは以下2つの簡単な操作のみで複雑なシステム対応を実現しています。
- 画面真ん中にあるバーに質問内容を入力
- 画面右側の”Browse Files”をクリックし、操作画面のスクリーンショットを入力
Step2:AIによる解析
Step1でのユーザー入力をもとに、CADに関するドキュメントや過去の問い合わせ履歴が入ったデータベースを参照しながら、操作が行き詰まっている原因とその解決策を特定します。
直接内部の動作を見ることはできないですが、事前に用意したデータベースから関連する公式ドキュメントと過去の問い合わせ履歴を取得できていることが分かります。この機能によって、従来のように膨大な量のドキュメントを参照したり、サポート部署に問い合わせをする必要がなくなり、技術者は本来の業務に集中することができます。
Step3:解決策の提示
本ツールはマルチモーダル対応のRAGを活用しているため、操作に関するアプローチや設定についての詳細な解決策をテキストだけでなく、参照ファイルや過去の問い合わせ動画も併せて出力することが可能です。操作方法に関する詳細情報にすぐアクセスすることができ、テキストのみの説明に比べてより分かりやすい形式で情報を確認することができます。
今回はCADを例に挙げましたが、このデモを通じて弊社ツールの活用により、複雑なシステムへの問い合わせ対応が従来よりも正確にかつ格段に早くできるようになったことがおわかりいただけたと思います。また、マルチモーダル対応によってテキストだけでなく、参照ファイルや動画も扱うことが可能なため、より実務に即した使いやすいシステムとなっています。
おわりに
本記事では、複雑かつ専門的なシステムの問い合わせ対応に膨大な工数がかかっているという多くの業界においての共通課題に対して、弊社で開発した「マルチモーダル対応のRAGによる自動問い合わせツール」がどのように効率化を図るのか、ツールの詳細と実際の業務効率化を実現しているデモをご紹介しました。弊社のツールを導入することで、従来は膨大なドキュメント確認や社内サポート部署への問い合わせが必要であった作業が効率化され、生成AIを活用することで技術者は余計な手間を費やすことなく本来の業務に集中できるようになることがお分かりいただけたと思います。
また、デモで示したように、弊社のツールでは操作画面のスクリーンショットと簡単な説明テキストの入力だけで、関連ドキュメントや過去事例を参照し、的確な解決策を即座に提示します。また、テキストだけでなく様々なファイルや動画形式のデータを組み合わせることで、より直感的で分かりやすい問い合わせ対応を実現し、現場全体の生産性向上に大きく貢献することが可能となっています。
弊社のAI Transformation(AX)事業部では、今回紹介した自動問い合わせシステムの事例以外にも、生成AIを活用した業務効率化支援を数多く行っています。お客様のニーズに合わせた最適なソリューションを提供し、AI活用による業務変革(AX)をサポートします。