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はじめに
現代のソフトウェア開発環境では、AIツールの活用が不可欠になりつつあります。中でも特に注目すべきは、2024年末にリリースされたAI開発エージェント「Devin」です。
本記事では、Devinの基本的な特徴や機能を説明すると共に、弊社が実際に導入して検証した結果から見えてきた効果的な活用方法について詳しく紹介します。また、導入プロセスで直面した課題とその解決策についても具体的に解説します。
Devinを業務に効果的に取り入れる際の参考として、ぜひご活用ください。
Devinとは

Devinは、プログラム開発作業を自律的に行うことができるのAIエージェントです。2024年12月に登場したこのツールは、開発現場に大きな変化をもたらしています。
一般的な会話型AIとは大きく異なり、Devinは単に質問に答えたりコードの一部を提案したりするだけではありません。その特徴は、実際にプログラムのコード書き、そのプログラムの動作を確認し、問題があれば自ら修正を行うところまで、一連の作業を自律的に進められる点にあります。
つまり、Devinは単なるアドバイザーではなく、実際に作業を完結させることができる一人の「エンジニア」として機能します。人間の開発者が指示を出すと、その意図を理解し、必要な作業を順序立てて実行していくのです。
特に日常的に発生する定型的な開発作業において、Devinは開発者の負担を大きく軽減し、より創造的な業務に集中できるよう支援する頼もしい味方となります。
Devinの特徴
Devinの主な特徴は以下です。

対話形式で開発指示が可能
Devinはチャットアプリで会話をするように指示を出すことができます。たとえば「ウェブサイトにお問い合わせフォームを追加して」や「このエラーを修正して」といった自然な言葉での指示が可能です。
自らプログラムやコマンドを実行することなく、部下に指示するような感覚でDevinが作業を自律的に進めてくれます。
開発タスクを自律的に実施
Devinは指示を受けると、必要なプログラムを書くだけでなく、そのプログラムを実際に動かして動作をテストします。
問題があれば自分で修正し、最終的に完成したプログラムを出力します。通常、これらの作業は人間が一つ一つ手動で行う必要がありますが、Devinはこれらを自動的に一連の流れとして実行します。
主要プログラミング言語に対応
Devinは複数の主要プログラミング言語(PythonやTypeScriptなど)を理解し、使いこなすことができます。例えば「Pythonを使って天気予報を取得するプログラムを作って」と指示すれば、Python言語の文法やライブラリを活用したプログラムを作成します。
GitやGitHubの操作が可能
プログラムの変更履歴を管理するツールであるGitや、開発者間の共同作業を支援するプラットフォームであるGitHubの操作も自動で実施します。Devinがコードの変更内容を記録してチーム内で共有することで、通常は複雑で時間のかかる共同作業の調整を大幅に簡略化します。
一般的な開発知識を保有
プログラムは単に動けばよいというものではなく、後から修正や機能追加がしやすいように書かれていることが重要です。Devinはこうしたプログラムの書き方の原則を理解しており、単に機能するだけでなく、長期的に維持・発展させやすいコードを生成します。
独自の開発ルールやノウハウをテキストベースで学習可能
どの会社やチームにも、プログラムの書き方や命名規則、設計方針などに関する独自のルールがあります。Devinは、その特有の規則やノウハウをテキストで教えることで、与えられたルールに従ったプログラムを作成します。例えば「データベースの変数名は必ずdb_から始めること」などのルールを学習させれば、それを記憶し、以後の作業に反映します。
Devinにできること・できないこと
Devinの能力を正確に把握することで、効果的な活用が可能になります。

得意なこと:
- 指示が明確なタスクの実行
- リポジトリ(大量のプログラムが含まれているデータ)の内容を読み解いて説明
- ドキュメントの作成
- プログラムの内容を理解して修正
苦手なこと:
- 自由度が高い0からの開発
- 大きな粒度の開発タスク
- プロジェクト全体の設計や技術選定
また、先述の通り、従来のAIワークフローとDevinの最大の違いは、一連の開発プロセスを自律的に実行できる点にあります。特定のステップに特化した従来のAIツールでは、コードの生成といった単一のタスクは自動化できますが、それ以上の一連の作業をこなすことはできませんでした。
しかしDevinは違います。レビュワーからのコメントに基づいてプログラムを修正し、さらに動作確認までを行うといった連続した作業全体を一括でこなすことができるため、一連の開発タスクを効率的に進めたい場合に有効です。
指示さえすれば個別のワークフローを組む必要なく、従順にタスクを実行してくれる「痒いところに手が届く存在」として、開発プロセス全体をスムーズに進行させることができるでしょう。
一方でコスト面では、Devinは比較的高額(月額500ドル)であるため、局所的にAIを導入するだけであればAIワークフローを自前で構築する方が経済的です。
Devinを使いこなすための3つのポイント
開発ルールは開発を進めながら段階的に教え、Devinのデータベースに追加していくAIエージェントという特性上、あらゆる開発タスクを任せたくなるところですが、現時点でのDevinには実行できるタスクに限界もあり、上手に使いこなすことが重要です。
ここでは、Devinを使いこなすための3つの重要ポイントを紹介します。

ポイント①:AIへのオンボーディングの徹底
オンボーディングとは、AIが特定のプロジェクトや開発環境で効果的に働けるよう、必要な情報や環境を整えるプロセスのことです。Devinを使いこなすためには、まず初めにこのオンボーディング・前提知識の整備を徹底することが重要です。
「DevinはAIエージェントだから、大まかな指示で十分」と考えがちですが、実際には詳細な情報提供が必要です。特に環境構築のような設定項目が多いタスクでは、明確な指示がないと失敗するリスクが高くなるため、より丁寧な準備をすることが大切です。
効果的なオンボーディングのコツ:
- 新規プロジェクトでは、初期のフォルダ構成や使用言語、フレームワークを事前に指定する
- 既存のボイラープレート(ひな形)を用意しておく
- 既存プロジェクトへの参画時は、開発環境用のDockerfileを準備する
- 認証関連はDevin単体では対応できないため、サポート体制を整える
- 開発ルールは開発を進めながら段階的に教え、Devinのデータベースに追加していく
ポイント②:タスクの分解
Devinは先述の通り、新規機能をゼロから作るような自由度の高いタスクが苦手です。
特にアーキテクチャ(「全体的な仕組みをどのように組み立てるか」といった基本的な設計方針)が定まっていない段階では、思い通りの結果を得ることが難しい傾向があります。ある程度成果物のイメージを持っている状態でタスクを依頼する場合、タスクの抽象度が高いほど成果物イメージとの乖離が大きくなります。
タスク分解の例:
「既存のアプリケーションにLLMを使ったChat機能を実装して」
↓
1. ドキュメントのQuick Startを参考にしてChat機能を実装する (ドキュメントURLを提供)
2. XXX.pyを参考に、実装したChat機能をLangChainに切り替える
3. GCPのCloud Runにデプロイできるよう、Dockerfileなど必要なファイルを修正する
大きなタスクは分解して、それぞれの作業の順番や関連性を明確にすると、意図した出力を出せる可能性が高まります。また、タスクの分解作業自体は人間が行う必要はなく、o1 proなどのLLMにタスクの整理や調整を任せるのも効果的です。
ポイント③:十分なコンテキストの用意
Devinは開発に関して一定の知識を持っていますが、依頼の抽象度が高い場合は依頼者の想定とは異なる方法で問題を解決しようとすることがあります。
結果的に作り直しが必要になるケースも少なくないため、タスク依頼時に十分なコンテキストを提供することが重要です。
コンテキスト提供のコツ:
- Devinの間違いに気づいたら、チャットで割り込んで必要な情報を追加する
- 「設計や開発に入る前に一度確認するように」と指示することで、Devinから追加情報を求めてもらう
- Devinが保持していない知識(例;新しいライブラリの使い方)については、詳しい情報や使用例を提供する
- 必要なドキュメントの該当箇所のリンクや内容をコピーして直接提供する
Devinは自力でネット検索やドキュメント調査を行って問題を解決するわけではないため、人間がある程度情報を整理して事前に与える必要があります。
Devinと相性がよい方とは?

Devinへのタスク依頼・指示に関しては、 ①エンジニアメンバーとの業務 ②暗黙知をプロンプトに落とし込むといったプロンプトエンジニアリング業務 などに共通点があり、以下に該当する方はDevinとの相性がいいと言えます。
- プロジェクトマネージャーの業務でタスクを日常的に分解している方
- エンジニアリングチームの管理経験がある方
- LLMエンジニア業務などで日々専門知識や暗黙のルールを言葉にしている方
Devinが強みを発揮する場面とその3つの理由
Devinは、ある程度長期間運用されるプロダクト開発において特に強みを発揮します。短期的な開発よりも継続的なプロジェクトでの活用が効果的である理由は、以下の3つです。
- 環境が整備されているため:長期プロジェクトでは、Devinが活用可能なツールやスクリプト、環境が用意されているため、オンボーディングコストが小さくなり、開発範囲が広がります。
- 信頼性の高い情報が多いため:コードベースやドキュメントが安定しているプロジェクトほど、Devinがそれらを参照して高品質な開発ができます。
- データが蓄積されるため:開発期間が長いほどDevinに多くの専門知識やルールを追加できるため、アウトプットの品質が向上します。Devin教育の効果が積み重なっていきます。
結果的に、コストをかけて環境構築し、Devinのナレッジを充実させた分だけDevinの作業効率が上がるという好循環を作ることができます。
一方で、超短期のデモ作成や開発には、オンボーディングコストの観点やDevinの特性を活かしきれないという理由から適していないと言えるでしょう。
まとめ
AIエージェントDevinは、完全にエンジニアを代替するものではありませんが、適切な条件が整えば実際の開発現場でも大きな力を発揮します。
オンボーディングの充実、タスクの適切な分解、十分なコンテキスト提供という3つのポイントを押さえることで、Devinの可能性を最大限に引き出すことができるでしょう。
AIエージェント技術は日々進化しており、Devinのような開発支援ツールはこれからますます重要になります。
弊社のAI Transformation(AX)事業部では、今回紹介したDevinのような開発支援ツール以外にも、生成AIを活用した業務効率化支援を数多く行っています。お客様のニーズに合わせた最適なソリューションを提供し、AI活用による業務変革(AX)をサポートします。